

本記事の内容
- ①発展途上国の定義とは?実は基準がいろいろある。➾有名なのはOECDの「ODA受取国リスト」
- ②地図に落とし込むと色々見えてくる。➾発展に地域差が見えてくる
本記事の信頼性
記事を書いている私は、プロとして国際協力を仕事にして4年、アマ時代も含めると17年国際協力に携わっています。
読者さんへの前置きメッセージ
本記事では「国際協力に興味があるけど、先進国?発展途上国?そこからよくわからないわ」という方に向けて書いています。
この記事を通して、途上国の定義をとおして途上国への理解が深まれば幸いです。
それでは、さっそく見ていきましょう!
①発展途上国の定義とは?実は基準がいろいろある。➾有名なのはOECDの「ODA受取国リスト」
まず先進国、発途上国はどのように区別されているのでしょうか。
まず先進国、その後に発展途上国という形で見ていきましょう。
先進国=OECD(経済協力開発機構)加盟37か国
実は先進国という定義もしっかり存在しません。国際機関、IMF等それぞれで先進国の定義が存在します。
日本の内閣部では資料の中で、以下のように定義しています。
先進国:OECD加盟国。
内閣府では、先進国はOECD(経済開発協力機構)に加盟している37カ国とし、発展途上国をそれ以外の国としています。
OECDっていう結構発展した=生活が豊かになった(とされる)国々で作った国際組織があるんですね。
ここに加盟している国が先進国。シンプルですね。
OECD加盟37か国一覧
オーストリア,ベルギー,デンマーク,仏,独,ギリシャ,アイスランド,アイルランド,伊,ルクセンブルク,オランダ,ノルウェー,ポルトガル,スペイン,スウェーデン,スイス,トルコ,英,米,カナダ、日本(1964年),フィンランド(1969年),豪(1971年),ニュージーランド(1973年),メキシコ(1994年),チェコ(1995年),ハンガリー,ポーランド,韓国(以上1996年),スロバキア(2000年),チリ,スロベニア,イスラエル,エストニア(以上2010年),ラトビア(2016年),リトアニア(2018年),コロンビア(2020年)
発展途上国の定義は?➾現時点では一人当たり国民所得(GNI)が12,235米ドル以下の国々
OECD以外発展途上国?と言われてもピンときませんよね。
まず「OECD(経済開発協力機構)」の目的は、以下3つです。
(1)経済成長:加盟国の財政金融上の安定を維持しつつ,できる限り高度の経済と雇用,生活水準の向上の達成を図り,もって世界経済の発展に貢献すること。
(2)開発: 経済発展の途上にある地域の健全な経済成長に貢献すること。
(3)貿易: 多角的・無差別な世界貿易の拡大に寄与すること。
つまり、経済が発展している国(先進国)から発展途上の国、開発途上の国(発展途上国)に対して支援や援助をすることを目的としてるんですね。
そこで、OECDは3年毎に「ODA(政府開発援助)受取国リスト」を発表しています。
このリストに載っている国が開発途上国とされ、「ODA(政府開発援助)」を受け取ることができる資格があることを表します。
以下がその受取国リストです。
出典:2019年版開発協力白書
この基準で行くと、少なくとも、2016年時点の一人当たり国民所得(GNI)が12,235ドル以下の国々は、総じて発展途上国と呼んでいいことになります。
世界196の国と地域のうち、なんと、148の国と地域にものぼります。
後発開発途上国(LDCs:Least Developed Countries)とは?➾一人当たりGNI1,025ドル以下の国々
発展途上国の中でも、特に開発、発展が遅れている国があります。
そのような国は、世界の中でも「最貧国」「貧困国」と呼ばれることがあり、その名の通りまだ経済が発展しておらず、国として貧困状態にあることが多いです。
同じ国の中で格差はありますが、総じて国全体として貧しい国が多いです。
以下3つの基準を満たした国がLDCと認定されます。ただし、当該国の同意が前提となります。
- (1)一人あたりGNI(2014~2016年平均):1,025米ドル以下
- (2)HAI(Human Assets Index):人的資源開発の程度を表すためにCDPが設定した指標で、栄養不足人口の割合、5歳以下乳幼児死亡率、妊産婦死亡率、中等教育就学率、成人識字率を指標化したもの。
- (3)EVI(Economic Vulnerability Index):外的ショックからの経済的脆弱性を表すためにCDPが設定した指標。人口規模、地理的要素、経済構造、環境、貿易のショック、自然災害のショックから構成。
年間1,025ドル÷365日=2.8ドル/日で生活していることになります。
食だけでなく、衣、住、も含めて、1日2.8ドルです。貧しいかどうかは主観が入る部分もありますが、決して豊かな生活ではないとはいえるかと思います。
LDCsのリストは以下のとおりです。
アフリカ(33):アンゴラ(2021年に卒業予定)、ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、中央アフリカ、チャド、コモロ、コンゴ民主共和国、ジブチ、エリトリア、エチオピア、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、レソト、リベリア、マダガスカル、マラウイ、マリ、モーリタニア、モザンビーク、ニジェール、ルワンダ、サントメ・プリンシペ(2024年に卒業予定)、セネガル、シエラレオネ、ソマリア、南スーダン、スーダン、トーゴ、ウガンダ、タンザニア、ザンビア
アジア(9):アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン(2023年に卒業予定)、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ネパール、イエメン、東ティモール
大洋州(4):キリバス、ソロモン諸島(2024年に卒業予定)、ツバル、バヌアツ(2020年に卒業予定)
中南米(1):ハイチ
この47か国です。
だいぶ地域差があるのがわかりますね。
まとめると、発展途上国の定義について、日本で採用されているのは、OECDの「ODA受取国リスト」です。
そのリストの中でも、一人当たりBNIによって、カテゴリー分けされています。
- 高中所得国(UMICs:Upper Middle-Income Countries)
- 低中所得国(LMICs:Lower Middle-Income Countries)
- 低所得国(LICs:Low-Income Countries)
- 後発開発途上国(LDCs:Least Developed Countries)
どの国にカテゴリーされるかで、その国が国際機関から融資を受ける際の金利レートも変わるため、単純なカテゴリー分けということでなく非常に重要なのです。
②地図に落とし込むと色々見えてくる。➾発展に地域差が見えてくる
①でわかった、開発、発展が特に遅れている国「後発開発途上国(LDCs)」を一度地図上に落としてみましょう。
すると、アフリカに偏っていることが見えてきます。
出典:第5回 発展途上国と先進国を分ける基準って何ですか?《おしえて!知りたい!途上国と社会》(熊谷 聡) - アジア経済研究所 (ide.go.jp)
地図を見るとよくわかりますね。
後発開発途上国(LDCs)の要因となる問題は様々ですが、戦争や紛争、内戦などが続いていた国が当てはまることが多いという特徴があります。
地域的にはサハラ以南のアフリカに集中しています。
低中所得国(LMICs)まで範囲を広げると、インドを中心とした南アジアのほとんど、東南アジアの一部まで広がります。
国際機関や各国ドナーがアフリカ、南アジアを中心に支援に力を入れている理由がよくわかります。
ドナーや国際協力の仕事についてはこちらをどうぞ。
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国際協力の仕事5選(業界の全体像を簡単に理解しよう!)
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伝統的先進国の援助機関を解説(各国の援助の特徴がわかるよ!)
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まとめ:発展途上国の定義「OECDのODA受取国リスト」から、発展の地域差、偏りが見えてくる!
記事のポイントをまとめます。
- 発展途上国の定義とは?実は基準がいろいろある。
- 有名なのはOECDの「ODA受取国リスト」。日本ではこちらを採用している。
- 「ODA受取国リスト」に掲載されている発展途上国は148の国と地域。特に開発が遅れている「LDCs」は47か国。
- 地図に落とし込むと、アフリカ、インド中心として南アジアは発展が遅れているのがわかる。
このようなイメージでしょうか。結論として、「ODA受取国リスト」からアフリカ、南アジア発展の遅れが見える!、ということですね。
これからも国際協力に関係する情報を掲載していきます。それでは!