途上国滞在記

バングラデシュ看護師業界の概要

今日は、バングラデシュの看護師業界についてまとめていきましょう!

 

バングラデシュの看護師の数は、お医者さんの数より少ない!

出典:International Nurses Day: Nurses struggle for deserved recognition | Dhaka Tribune

バングラデシュは、医師が看護師を上回っている(!)世界でも数少ない国の1つです。

世界保健機関(WHO)のガイドラインによると、医師と看護師の理想的な比率は1:4とのことです。つまり、医療サービスを適切に提供するために、国内の各医師に対して4人の看護師がいる必要があります。

しかし、バングラデシュは1人の医師は0.74人の看護師しかいない、つまり、医師の数は看護師の数のほぼ1.41倍です!

看護師がお医者さんより少ないって驚きですよね。

バングラデシュには66,958人の登録看護師しかおらず、そのうち46パーセントが政府部門で働いています。そして大多数は大都市圏で働いています。

都市部では10,000人ごとに5.8人の看護師がいますが、農村部では同じ数の人に対して0.8人の看護師しかいません。

農村部は状況はもっとよくないようです。

このような数字からもバングラデシュに十分な数の看護師がいないことは明らかですね。

 

しかし、その数が非常に少ない理由を理解するには、バングラデシュの歴史、文化、社会構造を深く掘り下げる必要があるようです。

バングラデシュにおける看護の歴史

独立前のバングラデシュにおける看護の最も重要な出来事は、1952年に軍隊の看護サービス法を制定し、1970年に看護大学を設立したことでした。

看護の4年制学部が作られたんですね。

その後バングラデシュが独立した1971年後、1977年に2年間の大学院も開始されました。

同じ年に、理学士のコースも開始。理学士の学位は、看護のより高い学位として導入されました。しかし看護師の抗議により、残念ながら数年後にこの理学士の学部は閉鎖されました。なんでだー。

 

独立後のバングラデシュにおけるこの分野の進歩は大きく、看護サービス局、看護大学、看護訓練研究所を設立し、公立病院で看護師を募集するための条例を作ったのです。

 

看護評議会条例は1983年に起草され、看護教育の規制の枠組みを作成するのに役立ったようです。

 

2016年はバングラデシュの看護師にとって重要な年でした。その年、助産師が看護分野として追加され、バングラデシュ看護評議会はバングラデシュ看護助産評議会(BNMC)に改名されました。さらに、看護サービス局は、看護助産総局に昇格しました。

 

しかし、先進国では医師と同様に看護師が医療サービスに欠かせない要素と見なされていますが、バングラデシュの看護師は処方箋を書くことさえ許可されていません。

経験豊富な看護師でさえ、医師の監督なしに医療処置を行うことは想像もできません。なぜそのような状況になっているのでしょうか。

 

看護師が増えない社会文化的背景は?

出典:Nurses barred from speaking to media | Dhaka Tribune

残念ながら、看護の仕事は伝統的にバングラデシュにおける主要な宗教であるイスラム教とヒンドゥー教によって嫌われてきた歴史があるようです。

 

イスラムの伝統的な考え方から、イスラム教徒の女性が男性患者に触れて看護し、夜勤を続けることは許可されていないと考えられています。

一方、ヒンドゥー教は体液を不潔と見なしているため、看護は、最下位のカーストに属する人たちの仕事とされていました。

 

植民地時代から、社会的地位の低い女性の職業として看護師の仕事は始まったようです。

その結果、今なお看護師は下級の人にのみ適した職業と一部の人から見られている。この考え方は、一般大衆だけでなく、教育を受けた人々にも存在していました。

その結果、看護師の需要は非常に大きいものの、職の成り手は少ないままでした。

人口のかなりの部分がこの分野に関心を持っていないため、民間投資家もまた、経済的に利益がないため、新しい看護教育機関を開設することに消極的だったのです。

日本だと全くイメージができないですね。看護師が尊敬されない仕事だなんて。

 

私もバングラデシュの病院に通ったことがあるのですが、基本入院患者には、親族一人が24時間ついて、入院患者の身の回りのことはその親族がやるという前提があることを説明されました。

もしかしたら今は色々変わっているかもしれませんが、看護師が少ないことのしわ寄せは親族にいくことになります。

 

状況を改善するポイント

看護業界における教育の質とサービスの質に疑問を抱く人はまだまだ多いようです。ただ、そんな中でも、改革は行われてきました。

バングラデシュは看護職の公務員をClass-3からClass-2の公務員に昇格させました。

バングラデシュの公務員は、Class-1 からClass-4の4つのクラスがあります。

Class-1はいわばキャリア官僚と呼ばれるクラスで、Class-2~Class-4はいわゆるノンキャリになるのですが、看護職はそのノンキャリの中でも高いClass-2に昇格したということになります。

さらに、看護師に対する政府の手当を導入し、民間部門を通じてより多くの看護機関を奨励し、新しいポストを作ることを進めています。

 

しかし、どうもこのような改革は、既存の看護師たちからすると懐疑的に映っているようです。

過去に理学士号を導入したときも、多くの看護師の不快感を表したからです。

公務員の看護師がClass-3からClass-2に昇格したときも、既存の看護師からはするといろんな意味で懐疑的な状態でした。

多くの看護師は、医師会や看護大学教授の権威によって、看護機関の教師の自由が脅かされるだろうと考えたようです。

助産師と看護師を団体としてまとめたり、政府の雇用の創出も懐疑的な目で見られていたようです。

 

この辺はいろいろ入り組んでいるようですね。

このセクターを発展させるために、色々な提案がなされていますが、これまでの主要な提案をまとめると以下3点となります。

看護教育の質の向上

第一に、看護教育の質を向上させ、かつ、より多くの学生を育成することが必要でしょう。

看護学校をどこに、どのような基準で設立すべきかについて、明確で効果的な方針がなければなりません。

予算の増額も必要となります。看護セクターへ拠出する政府予算は非常に低い状況です。

看護は、従来の臨床管理の専門職から、エビデンスに基づいたリーダーシップ指向の対応の専門職に進化する必要があると言えます。

 

看護師の地位向上には、様々な関係者の協力が不可欠

第二に、政策立案者の意思決定は、看護職の問題が複雑で、多面的で、社会的にも根深い問題をはらんでいることを理解する必要があります。

看護師の社会的地位を高めることは、保健セクターだけの努力ではできません。

長期的に各セクターの社会的、文化的な介入が必要です。

メディア、他の医療専門家、公衆衛生の専門家、社会科学者、教育者などのさまざまな利害関係者がこのプロセスに関与する必要があります。

 

既存の看護師たちから信頼される政策を

第三に、これからの新しい取り組みの成功率を高めるため、このセクターに関する政策やガイドラインは、実施する前に既存看護師の信頼を獲得する必要があります。

看護師から反発された過去の施策から、彼らの意見を優先する必要があるのです。

世界クラスの基準を満たすには、その数とサービス品質の両方をアップグレードする必要があります。

彼らは医者への受動的なヘルパーだけであるべきではありません。彼らの教育資格は、彼らが世界の他の地域と同じように、積極的な介護者になることができるレベルまで引き上げられなければなりません。

 

まとめ:バングラデシュの看護師業界はまさに発展途上

出典:Health workforce in Bangladesh | The Opinion Pages (bdnews24.com)

バングラデシュの看護産業をまとめると、以下のとおりです。

 

まとめ

①バングラデシュは圧倒的に、看護師が不足している。

②看護に対する社会的地位が低いこともあり、イメージが悪く、成り手が不足している。

③教育の質、人材(量)の確保が急務。と同時に、看護師の地位向上、既存の看護師との協調が必要。

 

このようなイメージでしょうか。結論として、バングラデシュの看護業界を改善には、多面的な取り組みが必須!ということでしょうか。

今後も、バングラデシュの産業を取り上げて概要をまとめていきたいと思います。

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