

本記事の内容
- ①国際協力の世界には新卒で入るべきか、中途で入るべきか:新卒の場合のメリットデメリット
- ②国際協力の世界には新卒で入るべきか、中途で入るべきか:中途の場合のメリットデメリット
- ③国際協力の世界には新卒で入るべきか、中途で入るべきか:努力は継続しよう
本記事の信頼性
記事を書いてる私は国際協力歴17年です。学生時代に途上国で1年間NGOボランティアも経験。民間企業で働いた後に、現在国際協力機関の総合職に転職し、今は途上国発展のためのお手伝いをしています。
読者さんへの前置きメッセージ
本記事では「国際協力に興味があるけど何をしていいかわからない」という方に向けて書いています。
この記事を通して、新卒で国際協力のキャリアを始めるきっかけやイメージづくりになればとてもうれしいです。
私自身、大学時代から国際協力にかかわり、そこからずっと国際協力の業界で仕事をしています。興味があるなら是非トライしてみて下さい。
それでは、さっそく見ていきましょう。
①国際協力業界に新卒で入るメリット・デメリット
大学卒業後、すぐに国際協力業界に入るメリット、デメリットをまとめていきます。
メリット①:やりたいことにすぐ取り組める
とても単純ですが、非常に大切なことととして、「やりたいことにすぐに取り組めること!」があります。
新卒で、かつこの国際協力業界を仕事にしてみたい!と思っている人がいるなら、このメリット非常に大きいと思います。
やりたくないことをやる必要って、ありますか?いやないです。
やりたいことを仕事にできるのは最高です。
新卒で入る一番のメリットだと思います。
メリット②:自分の興味のある分野を見極られる
新卒で入ると、目の前の仕事をやりながら、国際協力の世界にどっぷりつかることができます。
外からでは見えない部分、わからなかった部分がドンドン見えてきます。
さらに深く勉強しようと思えば、勉強できる環境が手に入ることは、とても大きいですよね。
具体的には、実は平和構築やりたいけど、配属は違う部署になったとします。
それでも、同じ会社の平和構築が専門の人の話を聞いたり、さらに会社に蓄積された資料を読んだり勉強したりして、仕事をしながら「自分が本当に興味がある分野は何か?」と突き詰めることができます。
最初から、分野を決めてなくても大丈夫です。
国際協力業界全体を見ながら、仕事をしながら自分の専門分野を選んでいくことができるのも、新卒でこの業界に入るメリットです。
次はデメリットを見ていきましょう。
デメリット①:手続き、調整業務中心になりがち
まず最初のデメリットは、調整業務中心の仕事になりがち、ということです。
民間企業でも、新卒はある一定程度の調整業務を行いますが、国際協力の場合は、特にその傾向が強いです。
特に政府系援助機関の場合は、調整業務もりっぱな仕事の一つであるので、新卒はまずその手続き面、調整業務をしっかり学ぶ必要があります。
基本的に業務は大きく分けて2つに分かれます。それは、サブとロジです。
サブはサブスタンスの略です。中身のことですね。
ロジはロジスティクスの略です。サブを実現するための手続き、です。
通常はサブが重要視されるのですが、実はこの関係は深く一筋縄ではいきません。
ロジを怠ると、サブもできなくなる、という関係にあるためです。
例えば、ある時間に大人数で会議を行うとします。会議の内容はサブです。
一方、どの会場で行うのか、開始時間は何時か、現地集合にするのか、車を出すのか、等々すべてがロジになります。
ロジが一つでも欠けると、会議がうまくいかない場合があります。そのためにロジも非常に重要です。
ただ、ロジは非常に大切なのですが、個人的にはイマイチ国際協力をやってる感がない仕事です。
この仕事をツマラナイと思う人もいるかも。ロジは必要は仕事ですので、これも仕事の一つとしてしっかり学ぶ期間としてワリキリも必要かもしれませんね。
デメリット②:専門性が身につかない
これはメリット②「自分の興味のある分野を見極られる」の裏返しとなります。
専門性はすぐに身に着くものではありませんし、ましてや大学卒業したての人はすぐ専門性を発揮するのは難しいです。
専門性がないとデメリット①のように、サブを考える仕事は難しく、消去法的にまずロジの業務をこなすことになります。
ロジも大変な仕事なので、朝から晩までロジでヘトヘト、、、なんてことも。
もちろんロジも大切なのですが、それだけやっていて専門性が身に着くのか?というとなかなか難しいのが現状です。
そのため、意識して自分で勉強をする必要があります。
もちろん、仕事を通してそれがそのまま自分の専門性になることが理想です。
しかし国際協力の世界では特に意識して自分で勉強しに行く姿勢がないと専門性は身に付きにくい、と感じています。
②国際協力業界に中途で入るメリット・デメリット
次は中途採用でこの国際協力業界に入るメリット、デメリットを見ていきましょう。
ここでの対象となる人は、これまで本業は国際協力関係の仕事ではない方を対象にしています。
私も転職する前は、まったく別業界の民間企業で働いていたのでこのパターンですね。
メリット①:専門性がある状態で開始できるのでサブにも貢献
中途採用で入ってくる方は、他業種で長く働いているので、分野の知識を持っている場合が多いです。
ある種専門性があるので、中途採用されたという意味でもあります。
これまで新卒はその専門性がないため、手続きや調整中心のロジ中心の仕事が主でした。
しかし中途採用はその専門性を活かして、まさプロジェクトの中身、サブに貢献しやすくなります。
例えば、大手ゼネコンで働いていた人が、国際協力業界へ転職して、都市開発のプロジェクトでサブに貢献したりできます。
また金融サービス業で働いていた人が国際協力業界へ転職し、資金調達や、円借款など資金貸付などの仕事に貢献出来たりします。
このように、他業種での知識や常識というものを、そのまま専門性として国際協力の仕事にいかすことができるのです。
これは前職の経験を活かしたい人にとって、良いニュースかと思います。
それだけ国際協力の分野は幅広いので、前職の経験はかならずどこかにヒットするはずです。
メリット②:困った人・国のために働く、で仕事モチベーションアップ
これも色々議論のあるところですが、単純に、困った人・国のために働くというのは、仕事上非常に高いモチベーションにつながります。
民間企業の仕事がそうではない、ということではありません。
ただ、民間企業はもちろん利益重視、最終的には営利企業なので、利益を上げることは絶対です。
ただ、国際協力の世界は、相手を助けるということが先に来ます。
それが結果的に、日本のためになるように、という考え方なので、仕事上の心の持ちようは民間企業とはかなり変わります。
仕事上の精神衛生上も、国際協力の仕事はやりがいがある仕事ですので、モチベーション高く仕事ができると思います。
デメリット①:出世が遅くなる?
デメリットとしては、単純に出世が遅くなる可能性があります。
これはどの業界でも同じことかもしれませんが、新卒者と中途採用者を比較するとどうしても同じというわけにはいかないとは思います。
当たり前といえば、当たり前ですので、仮に新卒と人と出世競争をしたい場合は、かなりの努力が必要かと思います。
デメリット②:パートナーとの関係
これは非常に難しい問題だと思います。
国際協力業界は、海外出張が非常に多く、家を空ける期間がながくなりがちです。
開発コンサルタントのコンサルタントになると、1年の半分は海外、というのも珍しくありません。
そのため、転職になる家庭環境の変化については、配偶者としっかり話し合う必要があると思います。
例えば、配偶者だけでなく、小さい子供がいる場合、出張中家事育児の負担がすべて配偶者にいくことになります。
そのような状況が受け入れられるのか。
また、国際協力業界は、途上国へ駐在する可能性があります。
アメリカやイギリスなどの先進国欧米の国ではなく、(相対的に)生活が不便な途上国での生活。
今一般的には転勤不要論が叫ばれている中で、このような業界に転職することに配偶者が納得するのか。
これは個人の人生論にも関係します。
転職した後に、配偶者から「こんな生活いや!」と言われないために、しっかり事前に話し合うことをオススメします。
デメリット③:2~3年の短期雇用になりがち
新卒、中途採用、、、と書きましたが、そもそもこの国際協力業界は、終身雇用という概念が薄いです。
国際協力の世界で終身雇用を前提としているのは、国際協力機構(JICA)、国際協力銀行(JBIC)、開発コンサルタントくらいです。
上記会社の中途採用の総合職で入るのは非常に狭き門です。
この総合職以外としては、国連機関の有期雇用、やJICAの有期雇用、開発コンサルタントの有期雇用になります。
国際協力業界で働くのと引き換えに、短期雇用の繰り返しになってしまいます。
上記の有期雇用のポジションを通してスキルがアップしていきますので、行動を続ければキチンとポジションを得ながら仕事を続けることは可能です。
ただ、日本では終身雇用重視する社会概念は強い傾向があります。
そのため、終身雇用である総合職を得られなかい場合は短期雇用を繰り返す、このようなライフスタイルが自分が受け入れられるのか、自問自答することをオススメします。
③現実を冷静にみつつも努力は継続しよう
ここまで読んで、「新卒、中途採用、それぞれメリット・デメリットあるんだなー」と理解していただけたら素晴らしいです。
ただ、ここで少し気を付ける部分を記載したいと思います。
学歴、スキル次第。運もある。
国際協力の業界で有名な国際協力機構(JICA)ですが、ここの新卒採用実績は、ここ数年30~50人レベルです。
応募総数に関して、JICAは公式な情報を出していません。
ただ、こちらのウェブサイトによると、毎年1万人のエントリーがあり、倍率は250~300倍になります。
肌感覚としては1万人は多すぎる印象がありますが、高い倍率であることは間違いありません。
このレベルになると、学歴だけでなく、面接での失敗しないかなど、運の要素もあると思います。
ではJICAの中途採用の総合職はどうでしょうか。新卒ほどではないにせよ、実力のある方が数百人応募し、採用されるのは年30人程度です。
こちらも狭き門です。採用ページはこちらです。社会人採用 | JICAについて - JICA
開発コンサルタントも状況は同じで、新卒で入る枠は狭く、中途採用も募集要項に特定した分野を求められるので、こちらも狭き門です。
国際NGOでも新卒は狭き門であることはかわりません。
国際協力を仕事にしたくても、終身雇用である総合職に就ける可能性は非常に低い、ということも認識していきましょう。
不安定な状態も良しとできるか
では、仮に新卒で国際協力の総合職に就けず、その後短期雇用を続けるという状況について考えてみましょう。
雇用として不安定な状態ですが、お給料が確保され、きちんとスキルが上がっていく、そんな状況を皆さん楽しめそうか、一度考えてみて下さい。
その不安定な状態と引き換えに得られるのは、貧しい人や困った人、困っている国のためにお仕事をできる幸福感や充実感だったりします。
国際協力の世界も今後働き方が変わってくると思いますが、流動的な仕事の仕方はすぐに変わらないと思います。
世界的な流れはどちらかというと、人材の流動性重視に動きつつありますし。
みなさんはこのような状況も含めて楽しめそうでしょうか?
継続してスキルアップ、専門性を高める努力をしていこう
新卒で入っても、中途で入るにしても、継続した学びは国際協力の世界では必要になります。
新卒で入っても専門性を高めるために、働きながら大学院に行く。
今いる会社でより専門性を高めるために努力する。英語を使う部署へ異動希望を出し、実際に日々英語を使うなど。
新卒で国際協力業界に入らなくても、スキル、専門性を高める機会は多く存在します。
国際協力業界で仕事をしたいと思われるなら、新卒でも中途を狙うにしても、継続した努力というのは必要になります。
まとめ:新卒、中途、それぞれメリットデメリットあり。努力は継続していこう。
記事のポイントをまとめます。
- 国際協力業界に新卒で入るメリット:やりたいことがすぐ取り組める、自分の興味ある分野の見極めができる
- 国際協力業界に新卒で入るデメリット:手続き調整業務がメインになりがち、専門性が身に付きにくい
- 国際協力業界に中途で入るメリット:専門性を活かせる、仕事のモチベーションアップ
- 国際協力業界に中途で入るデメリット:出世が遅い?、パートナーとの関係、短期雇用になりがち
- 国際協力業界の世界には新卒で入るべきか、中途で入るべきか。どちらを目指すにしても継続した努力が必要。
このようなイメージでしょうか。結論として、新卒、中途共にメリットデメリットありますが、継続した努力がまずは大前提、ってことですね。
国際協力の世界で新卒で入るのは狭き門ですが、国際協力の業界で働くために、JICAインターンをしたり、ボランティアをしたり、(もちろん)勉強したり、是非いろいろトライしてみて下さい。
中途採用の人は、今いる自分の業界で専門性を高める努力、国際協力で必要な英語などのスキルを高める努力を続けて頂ければと思います。
国際協力の業界で働くと、社会問題を解決するという醍醐味をダイレクトに味わえます。是非一人でも多くの方にこの感覚を味わってほしいです。それでは!